「Googleマップの評価を上げれば韓国人も来るはず」— これは訪日韓国人の集客でよく聞く前提です。ただし韓国の検索環境は日本と構造が異なり、この前提のままでは打ち手を外すことがあります。
一方で「韓国人はGoogleを使わない」という単純化も正確ではありません。実際のシェア統計を見ると、むしろGoogleが上回る調査結果もあります。本記事では、韓国の検索エンジンシェアの数字が調査ごとに割れる理由を整理したうえで、訪日韓国人が店を決めるまでの行動と、日本の店舗が取るべき対策を解説します。
韓国の検索エンジンシェアは、調査によって大きく割れる
まず数字から確認します。StatCounter GlobalStatsの「検索エンジン市場シェア(韓国)」(2026年7月)では、次のようになっています。
- Google: 49.54%
- Naver: 40.9%
この数字だけを見れば、韓国の検索エンジンの主役はGoogleということになります。一方で、韓国のマーケティング関連の記事では「NAVERが6割以上」と紹介されることも珍しくありません。同じ「韓国の検索エンジンシェア」という指標が、調査によって40.9%から60%超まで振れるのが現状です。
数字が割れる理由は集計方法にある
StatCounterのような計測は、ブラウザを経由した検索行動を集計します。ここで反映されにくいのが、アプリからNAVERを直接開く使い方です。韓国のユーザーにとってNAVERは検索窓というより、ニュース・ブログ・カフェ(コミュニティ)・ショッピング・地図を束ねたポータルであり、生活の入口として使われています。この経路の利用は「検索エンジンの利用」として計上されにくくなります。
逆に、韓国国内の調査会社によるアンケート型の調査では、体感に近いNAVER優位の数字が出やすくなります。どちらかが誤りというより、測っているものが違うと理解するのが正確です。
実務上の含意はシンプルです。単一の数字を根拠に施策を決めない。 「NAVERは6割だからNAVERだけやればいい」も、「Googleが5割だからGoogle対策で足りる」も、どちらも根拠として弱いということです。
検索エンジンのシェアより重要なのは「どの場面で使われるか」
集客の観点で見るべきなのは、全体のシェアではなく店舗を選ぶ場面で何が使われているかです。ここでは用途によってはっきりと役割が分かれます。
| 用途 | 主に使われるサービス | 補足 |
|---|---|---|
| 一般的な調べもの・海外情報 | 英語圏の情報を探す場面では強い | |
| 店・スポットの口コミ確認 | NAVER(ブログ検索) | 実際に訪れた人の体験記を読む用途 |
| 地図・ナビ・保存 | NAVERマップ/カカオマップ | 国産アプリが生活インフラとして定着 |
| 翻訳 | パパゴ(Papago) | 旅行中の翻訳で広く使われる |
| 友人との共有・連絡 | カカオトーク | 情報の共有経路として無視できない |
日本の感覚に置き換えると、「Google検索 + Googleマップ + 食べログ + 個人ブログ」の役割が、韓国ではNAVERというひとつのサービスの中で完結しているイメージです。
韓国でGoogleマップが主役になりにくい背景
韓国国内では、地図データの国外持ち出しに関する規制の影響で、Googleマップの一部機能(徒歩ナビ等)が長らく制限されてきました。その結果、韓国ではNAVERマップやカカオマップといった国産地図アプリが定着しています。
集客の観点で重要なのは、この習慣が海外旅行にも持ち込まれることです。日本旅行中の韓国人観光客も、使い慣れたNAVERマップで保存済みの店を回る、という行動が起きます。
訪日韓国人の情報行動は「発見 → 検証 → 保存 → 現地」の4段階
訪日韓国人の店舗選びは、おおむね次の流れで進みます。
| 段階 | 使うサービス | 行動 |
|---|---|---|
| ① 発見 | Instagram・YouTube | ショート動画や投稿で店・エリアを知る |
| ② 検証 | NAVER(ブログ検索) | 店名・エリア名で検索し、体験記で「本当に良いか」を確認 |
| ③ 保存 | NAVERマップ | 行きたい店をリストに保存し、旅程を組む |
| ④ 現地 | NAVERマップ・パパゴ | 保存した店を回る。迷ったら再度その場で検索 |
店舗集客の観点で最も重要なのは②検証です。SNSで話題になっても、NAVERで検索して体験記が出てこなければ「情報が少なくて不安な店」として候補から外れます。発見の入口がどこであれ、最後の意思決定はNAVER上の情報で行われやすい — これが実務での実感です。
実践アドバイス: 商談で店舗のNAVER検索結果をその場で一緒に見ると、「Instagramでは話題なのにNAVERでは競合しか出てこない」ことに初めて気づかれるケースが少なくありません。まず自店名とエリア名で実際に検索してみることをおすすめします。


