
結論から言うと、伸び続ける訪日韓国人(前年同期比18.6%増)を取り込むには、Googleに加えてNAVERでも見つかる状態を作ることが最優先です。2026年上半期、訪日外国人数全体は前年同期比2.0%減と前年割れに転じました。押し下げた要因は中国の56.4%減であり、そのなかで韓国は18.6%増と伸び続けています。一方で、1人当たりの旅行支出は前年比マイナス。人数は増えているのに単価は落ちているという構造を理解しないまま施策を打つと、労力の割に成果が出ません。
本記事では、JNTO・観光庁の統計を原典から確認したうえで、訪日韓国人の行動特性と、飲食店・宿泊施設が取るべきNAVER対策の実務を解説します。
韓国インバウンド市場の最新動向【2026年上半期】
韓国は訪日市場において、単に「人数が多い国」ではなくなりつつあります。全体の成長が止まった局面での動き方を見ると、この市場の性格がはっきりします。
全体が前年割れするなか、韓国は前年同期比18.6%増
日本政府観光局(JNTO)の推計値によると、2026年1〜6月の訪日外客数は21,084,800人で、前年同期比2.0%減となりました。訪日市場全体が前年を下回るのは、コロナ後の回復局面では珍しい動きです。
ただし、市場ごとに見ると様相はかなり違います。主要市場の上半期実績は次のとおりです。
| 市場 | 2026年1〜6月 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 総数 | 21,084,800人 | -2.0% |
| 韓国 | 5,675,100人 | +18.6% |
| 中国 | 2,058,200人 | -56.4% |
| 台湾 | 3,972,200人 | +20.9% |
| 香港 | 1,298,500人 | +2.2% |
全体を押し下げたのは中国の急減であり、韓国・台湾はむしろ二桁成長を続けています。韓国は単月でも2026年6月に787,100人(前年同月比7.8%増)と、6月としては過去最高を記録しました。
つまり2026年の訪日市場は「全体として縮んでいる」のではなく、構成が入れ替わっている状況です。中国からの送客を前提に組み立てていた施策は成立しにくくなる一方、韓国・台湾に向けた取り組みの相対的な重要度は上がっています。限られた予算をどこに寄せるかを考えるうえで、この差は無視できません。
2025年通年は946万人で国別1位、消費額は9,897億円
2025年(暦年)の訪日外客数は42,683,600人と初めて4,000万人を超え、そのうち韓国は9,459,600人で国・地域別トップでした。訪日客全体の22.2%、およそ4.5人に1人が韓国からの旅行者という計算になります。
消費面では、観光庁のインバウンド消費動向調査(2025年暦年・確報)で韓国の旅行消費額は9,906億円、構成比10.5%で、中国・台湾・米国に次ぐ第4位でした。
なお、広く引用されている「9,864億円」は2026年1月公表の速報値で、確報で9,906億円に上方修正されています。確報の公表後も速報値のまま引用している記事が多いため、社内資料で数字を使う際は出典の版を確認してください。
※以降の表で使う「一般客ベース」の数値(韓国9,897億円・全体9兆4,110億円)は、クルーズ客を除いた集計で上記とは母数が異なります。
人数は増え、単価は下がっている
韓国市場を語るとき、消費単価の低さはしばしば論点になります。ここは曖昧にせず数字で押さえておいたほうが、施策の設計を誤りません。
2025年の一般客1人当たり旅行支出(パッケージツアー参加費の国内収入分を含む)は、次のとおりです。
| 韓国 | 全国籍・地域 | |
|---|---|---|
| 1人当たり旅行支出 | 105,058円(前年比 -3.7%) | 228,782円(前年比 +0.9%) |
| 一般客数 | 9,420,144人(前年比 +7.1%) | 41,135,081人(前年比 +15.5%) |
| 旅行消費額 | 9,897億円(前年比 +3.1%) | 94,110億円(前年比 +16.5%) |
※一般客数・旅行消費額はクルーズ客を除いたベースです。JNTOの訪日外客数(2025年42,683,600人/韓国9,459,600人)とは母数の定義が異なります。
韓国の単価は全体平均の46%で、しかも前年比で下がっています。消費額が+3.1%と伸びたのは、単価上昇ではなく来訪者数が+7.1%増えたためです。「韓国も単価が上がってきている」という説明は、少なくとも2025年のデータでは支持されません。
この構造は、打ち手の設計に直結します。1回の来店で高額を落としてもらう前提の設計は、韓国市場では噛み合いません。来訪の回数で積み上げる市場として捉え、「次に日本へ来たときにまた選ばれる」ための情報を残しておく設計のほうが機能します。
訪日韓国人の特徴をデータで確認する
図: 訪日韓国人数の前年同月比較(2026年7月)(出典: JNTO(日本政府観光局))
施策の前提になる部分なので、よく引用される定説を原典で確認しておきます。
リピーター82.8%。効くのは「4〜9回目」の層
「訪日韓国人の約8割はリピーター」という記述は、一次データで裏付けが取れます。観光庁の年次報告書(観光・レジャー目的)で来訪回数の内訳を見ると、次のとおりです。
| 来訪回数 | 韓国 | 全国籍・地域 |
|---|---|---|
| 1回目 | 17.2% | 36.0% |
| 2回目 | 16.4% | 14.4% |
| 3回目 | 16.8% | 11.6% |
| 4〜9回目 | 33.8% | 24.2% |
| 10回目以上 | 15.8% | 13.9% |
2回目以上を合計したリピーター比率は82.8%で、全国籍・地域平均の64.1%を18ポイント以上上回ります。
ただし実務で重要なのは、合計値ではなく内訳のほうです。韓国で最も厚いのは「4〜9回目」の33.8%という層で、全体平均の24.2%を10ポイント近く上回っています。4回目以上を合わせると49.6%と、ほぼ半数に達します。一方で初訪日は17.2%、およそ6人に1人にとどまります。
つまり韓国市場の主役は、日本旅行そのものが目新しくない層です。この層に対して、ゴールデンルートの紹介や「日本旅行の基本」といった情報がどこまで有効かは慎重に見たほうがよく、店舗単位・エリア単位の具体的な情報のほうが判断材料になりやすいと考えられます。裏を返せば、大手メディアが手を出しにくい粒度の情報にこそ、この層へ届く余地があります。
個人手配が90.9%。旅行会社経由の送客は期待できない
かつての韓国市場のイメージだった団体ツアー中心という構図は、すでに当てはまりません。旅行手配方法(全目的)の内訳は次のとおりです。
| 手配方法 | 韓国 | 全国籍・地域 |
|---|---|---|
| 個別手配(FIT) | 90.9% | 87.2% |
| 団体ツアー参加 | 6.6% | 9.6% |
| 個人旅行パッケージ利用 | 2.5% | 3.2% |
9割が自分で手配する個人旅行です。加えて来訪目的も観光・レジャーが89.6%(全体85.9%)と高くなっています。
旅行会社の送客に期待できない以上、旅行者本人の検索とSNSが来店の入口になります。ここが、韓国インバウンド集客がデジタル施策に寄る構造的な理由です。
「NAVERの検索シェア75%」は現状と合わない
韓国の検索環境を説明する際、「NAVERのシェアは75%前後」という数字がいまも引用されています。しかし2026年時点の主要な調査を並べると、実態はこうです。
| 調査 | NAVER | 対象期間 | |
|---|---|---|---|
| InternetTrend | 64.28% | 28.37% | 2026年1〜6月 |
| StatCounter | 40.90% | 49.54% | 2026年7月 |
数字が大きく割れるのは、測定対象のパネルが違うためです。InternetTrendは韓国国内サイトへの流入ログを集計しており国内サービス寄り、StatCounterは検索エンジンから外部サイトへ流れるリファラルトラフィックをグローバルなパネルで集計しています。どちらが正しいという話ではなく、「NAVERが圧倒的」とも「Googleが逆転した」とも言い切れないのが2026年の状況です。
実務上の結論はシンプルで、NAVERとGoogleのどちらも捨てられません。NAVER一本に賭ける設計も、Googleだけで足りるという判断も、現在のデータでは支持されにくくなっています。とくに日本旅行の情報収集では、NAVERのブログ・カフェ(コミュニティ)に蓄積された体験談が参照されやすく、Google側の対策だけでは韓国語の検討層に接点を持てない場面が残ります。
出典: InternetTrend(韓国国内の検索流入ログ集計) / StatCounter GlobalStats: Search Engine Market Share South Korea
韓国インバウンド集客の基本設計:旅マエ・旅ナカ・旅アト
韓国人旅行者は、日本人以上に検索とSNSでの下調べを徹底する傾向があります。そのため集客の設計も、旅行前・旅行中・旅行後という時間軸に沿って接点を並べるのが基本になります。
フェーズごとに使うツールが変わる
| フェーズ | 主に使われるツール | 打ち手 |
|---|---|---|
| 旅マエ | NAVER(ブログ・カフェ)、Instagram、YouTube | 「行きたい場所」の候補に入る |
| 旅ナカ | Googleマップ、カカオマップ | 現在地周辺の検索で見つかる |
| 旅アト | NAVERブログ、Instagram | 口コミが次の旅行者の判断材料になる |
見落としやすいのは、旅ナカの主役がNAVERではなくGoogleマップ・カカオマップに移る点です。旅マエのNAVER対策だけを整えても、現地で「いま近くにある店」を探している層は取り逃がします。逆に地図検索(MEO)対策だけでは、候補リストに載る前の段階で外れてしまいます。
そして旅アトに投稿された口コミは、次の旅行者の旅マエの材料になります。この循環ができると、施策を止めたあとも一定期間は蓄積した情報が流入を支えることが期待できます。単価が低く再訪頻度が高い韓国市場では、この積み上がりが効いてきます。
施策を始める順番
予算とリソースが限られる場合、着手する順番は次の考え方で決めると無駄が出ません。
- NAVERプレイスの整備(無料・審査を経て通常1〜3営業日で反映)— 店舗情報、営業時間、写真、メニューを韓国語で正確に載せる
- Googleマップの多言語対応(無料)— 旅ナカの取りこぼしを防ぐ
- NAVERブログでの露出(中期)— 体験談が検索結果に載る状態をつくる
- KOL(インフルエンサー)起用・広告(予算連動)— 上記の土台ができてから
順番が重要なのは、4から始めても受け皿がないためです。KOLの投稿を見て店名で検索した旅行者が、NAVER上で店舗情報にたどり着けなければ、そこで導線が切れます。土台を整えてから露出に投資するほうが、同じ予算でも歩留まりは変わってきます。
NAVER対策の実務 — 始め方と、成果を測るときの落とし穴
NAVER対策はGoogle SEOと構造が違うため、そのままのノウハウが通用しない部分があります。
NAVERは「カテゴリー別」に結果が並ぶ
Googleが検索キーワードへの適合順にページを一覧表示するのに対し、NAVERはブログ、カフェ、ニュース、ショッピング、プレイスといったカテゴリー(タブ)ごとに結果を整理して表示します。
この違いから、「NAVERで上位に出る」という表現は曖昧になります。ブログタブで上位なのか、プレイスで上位なのかで、必要な施策も旅行者の行動も別物だからです。施策を発注・受注する際は、どのタブでの露出を指しているのかを最初に揃えておくとズレが起きません。
順位の測り方に落とし穴がある
NAVERの検索順位を計測する際、開発者向けのAPI(検索OpenAPI)から取得した結果を成果指標に使うケースがありますが、APIの結果は実際の検索画面の並び順とは別のロジックで返ります。API上では上位に出ていても、旅行者が実際に見るブログタブでは表示されていない、ということが起こり得ます。
順位を成果として報告・確認する場合は、実際の検索画面(ブログタブ)での並び順を基準にするのが確実です。レポートを受け取る側としても、どの方法で計測した順位なのかを確認しておくと、実態と乖離した数字を成果と誤認せずに済みます。
韓国語コンテンツは翻訳品質が信頼に直結する
NAVERブログは実体験に基づく投稿が評価されやすい場です。自動翻訳をそのまま貼り付けたテキストは不自然さが目立ち、店舗への信頼を損なう一因になりかねません。
とくにメニュー名や食材の表記、待ち時間や予約方法の案内は、直訳では意味が通らないことがあります。ネイティブが違和感なく読める表現に整えることが、比較検討段階の旅行者からの信頼につながります。
自店の現状を確認したい方へ
NAVER上で自店がどう見えているか(プレイス登録の有無、ブログでの言及、競合との差)は、施策を決める前に把握しておく必要があります。こうした実務は当社K-ASOKUが代行しており、韓国人ブロガーとのやり取り・翻訳・投稿進行を当社スタッフが実際に行っています。K-ASOKUでは、店舗名・エリアをもとにした無料診断を行っています。→ お問い合わせはこちら


