結論から言うと、訪日外国人集客を成功させるには、最新の統計データで市場の動向を把握したうえで、情報発信・多言語対応・決済/予約環境という3つの課題に対策を打つことが欠かせません。訪日外国人数は2025年に4,268万人(速報値)と過去最高を更新し、市場ごとの増減差も拡大しています。本記事では、最新データの読み解き方から、多くの店舗・施設がつまずく課題、具体的な施策の進め方までを解説します。あわせて、韓国人観光客に的を絞ったNAVER対策が有効な理由や、規模別の打ち手も比較表で整理しています。
訪日外国人とは?基礎データで見る推移と現状
図: 主要4市場の訪日外客数(2025年暦年累計)(出典: JNTO(日本政府観光局))
図: 主要4市場の訪日外客数 前年比増減率(2025年)(出典: JNTO(日本政府観光局))
結論から言うと、訪日外国人数は2025年に42,683,600人(速報値)と過去最高を記録し、2026年に入っても増加基調が続いています。旅行消費額も2025年暦年で9兆4,559億円(速報値)と、こちらも過去最高を更新しました(観光庁・JNTO調べ)。集客施策を検討する前に、まずは全体像を数値で押さえておきましょう。
訪日外国人の意味・読み方・英語表記をおさらい
「訪日外国人」は「ほうにちがいこくじん」と読み、日本を訪れる外国人旅行者全般を指す言葉です。観光目的に限らず、商用や親族訪問なども含む広い概念で、統計上は「訪日外客数」という言葉で集計されます。英語表記は “inbound tourists to Japan” や “foreign visitors to Japan” が一般的で、観光庁・JNTOの英語資料では “visitor arrivals” と表記されることもあります。似た言葉に「インバウンド」がありますが、これは訪日外国人による消費・経済活動全体を指すマーケティング寄りの用語で、「訪日外国人」自体は人の移動を指す統計用語という違いがあります。自店舗の集客を考えるなら、まず「観光目的」の訪日外国人がどれだけいるかを把握することが出発点になります。
訪日外国人数・旅行者数の推移【2025年・2026年最新】
JNTO(日本政府観光局)によると、2025年の訪日外客数は42,683,600人(速報値)で、前年比15.8%増と過去最高を更新しました。2026年に入っても勢いは続いており、7月単月の訪日外客数は3,442,100人(前年同月比0.1%増)で、7月としては過去最高を記録しています。この7月は韓国・インドネシア・メキシコなど17市場が「7月として過去最高」を記録し、なかでも台湾は単月で初めて70万人を超え、単月として過去最高となりました。増加ペースはやや落ち着きつつも、市場ごとに好調・不調が分かれている点が2026年の特徴です。
国別の内訳と訪日外国人消費動向調査からわかること
2025年暦年の市場別内訳を見ると、韓国が9,459,600人(前年比7.3%増)、中国が9,096,300人(同30.3%増)と大きく伸びました。台湾は6,763,400人(同11.9%増)、香港は2,517,300人(同6.2%減)です(いずれも速報値)。
| 市場 | 2025年暦年 訪日外客数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 韓国 | 9,459,600人 | +7.3% |
| 中国 | 9,096,300人 | +30.3% |
| 台湾 | 6,763,400人 | +11.9% |
| 香港 | 2,517,300人 | -6.2% |
※上記はいずれも2025年暦年の速報値です(JNTO調べ)。
単月で見ると、市場ごとの波はさらに大きくなります。2025年12月は韓国が974,200人(前年同月比12.3%増)と好調だった一方、中国は330,400人(同45.3%減)と急減しました(いずれも速報値)。「訪日外国人」とひとくくりにせず、市場ごとの増減を分けて見る必要があることがわかります。
観光庁の「訪日外国人消費動向調査」では、2026年4-6月期の消費額上位5市場は米国・台湾・中国・韓国・香港の順でした。人数では韓国・中国が上位でも、消費額では米国が首位に立つなど、人数の多さと消費額の大きさは比例するとは限りません。ターゲット市場を決める際は、来訪者数と消費額の両方を確認することが欠かせません。
滞在日数の推移と消費額の関係
滞在日数は市場や旅行目的によって差が大きく、公的統計でも集計方法や公表時期が変わるため、ここでは断定的な数値は挙げません。ただし、消費単価(1人当たり旅行支出)の推移からは、滞在の質が消費額に影響している傾向がうかがえます。観光庁によると、2026年4-6月期の1人当たり旅行支出は24.4万円(前年同期比3.3%増)で、2025年暦年の22.9万円(同0.9%増)、2025年10-12月期の23.4万円(同0.5%減)と比べても上昇しています(2025年の数値はいずれも速報値)。
| 期間 | 1人当たり旅行支出 | 前年(同期)比 |
|---|---|---|
| 2025年暦年 | 22.9万円 | +0.9% |
| 2025年10-12月期 | 23.4万円 | -0.5% |
| 2026年4-6月期 | 24.4万円 | +3.3% |
※2025年の数値はいずれも速報値です(観光庁調べ)。
旅行消費額の総額も、2025年暦年で9兆4,559億円(前年比16.4%増、過去最高、速報値)、2025年10-12月期は2兆5,330億円(同10.3%増、四半期として過去最高、速報値)と伸びが続いています。人数の伸び以上に消費額が伸びている局面もあり、「何人来るか」だけでなく「1人当たりどれだけ使うか」を見る視点が、集客施策の優先順位を判断するうえで重要になります。
訪日外国人集客で多くの店舗・施設がつまずく3つの課題
「SNSを始めた」「翻訳ツールも導入した」。それでも外国人観光客が増えないと感じていませんか。多くの店舗・施設が同じ壁にぶつかっています。共通するのは「発信」「言語」「決済・予約」という3つのつまずきです。自社がどこに当てはまるか、確認してみてください。
情報発信が海外の観光客にまったく届いていない
まず多いのが、発信はしているのに海外の観光客には見えていないケースです。InstagramやXで日本語のみの投稿を続けていても、旅行前の外国人観光客の目には触れません。原因は媒体選びのズレにあります。訪日客は国・地域ごとに主に使うSNSやメディアが異なり、日本人向けと同じ発信を横展開しても届かない層が生まれます。
特に見落とされがちなのが韓国人観光客です。韓国では検索エンジンのシェアを自国ポータル「NAVER」とGoogleが二分しており、飲食・旅行のクチコミ探索ではNAVERブログが依然強いため、InstagramやXでの発信だけでは、来日前に情報収集する段階の候補にすら入れません。「発信量」ではなく「発信先」が合っているかを、まず見直す必要があります。
多言語対応が追いつかず言語の壁が生じている
次に挙げられるのが言語の壁です。メニューや館内表示、予約フォームが日本語のみだと、来店前の不安が解消されず離脱の原因になります。かといって、機械翻訳をそのまま貼り付けただけの多言語対応も、不自然な表現がかえって不信感を招くことがあります。
多言語対応は「英語さえあれば十分」とも限りません。ターゲットとする国・地域の言語で、かつ自然な表現になっているかが重要です。予約フォームや問い合わせ対応まで含めて、来店の意思決定から実際の来店までの導線全体を、対象言語でつなげられているかを確認しましょう。
決済・予約の導入遅れがそのまま機会損失になる
最後に、決済・予約まわりの整備が追いついていないケースです。現金のみ、あるいは自国で使い慣れた決済手段に対応していない店舗では、会計の段階で購入を諦められてしまうことがあります。予約についても同様で、電話予約のみ・日本語フォームのみでは、来日前にオンラインで予約を済ませたい層を取りこぼします。
ここまでの3つの課題は、いずれも「興味は持たれているのに、接点や手段がないために離脱している」という点で共通しています。次の章では、それぞれの課題に対する具体的な施策を見ていきます。
訪日外国人集客を成功させる効果的な施策
前章で挙げた3つの課題は、情報発信・多言語対応・決済予約という「入り口」の整備で解消できます。加えて、他店との差別化には地域ならではの体験や商品の打ち出しが欠かせません。以下の4つの施策は単独ではなく、組み合わせて進めることで効果が重なります。まずは自社の現状に近いものから着手するのが現実的です。
| 施策 | 主な内容 | 始めやすさ | 効果が出るまでの目安 |
|---|---|---|---|
| SNS・自社サイト発信 | 写真・動画の多言語投稿、サイト更新 | 高い(低コストで開始可) | 数週間〜数ヶ月で認知が広がる |
| 多言語対応 | メニュー・POP・予約フォームの翻訳 | 中程度(優先順位づけが必要) | 導入直後から離脱防止に効く |
| キャッシュレス・予約導入 | 決済端末・オンライン予約の設置 | 中程度(初期設定に手間) | 導入直後から機会損失を防げる |
| 地域体験・商品の提供 | 地域資源を活かした限定メニュー等 | やや難しい(企画が必要) | 中長期でリピート・口コミに波及 |
SNS・自社サイトでの情報発信を強化する
情報発信でつまずきやすいのが、「どの国・地域向けに、どのSNSで発信するか」を決めないまま始めてしまうケースです。欧米圏の観光客はInstagramやYouTubeを情報源にする傾向がある一方、韓国からの観光客が主に使うプラットフォームは異なります(詳しくは次章で解説します)。ターゲット国に合わせた発信先の選定が、情報発信を活用する上での土台になります。自社サイトも同様に、多言語で最新の営業情報・メニュー・アクセスを掲載し、SNSの投稿と連動させることで、来店前の検討段階で候補に入りやすくなります。
多言語対応(翻訳・言語対応)で受け入れ環境を整える
多言語対応は、優先順位をつけて着手するのが現実的です。まず必要なのは、メニュー・料金表示・予約フォームなど「購入・予約の意思決定に直結する情報」です。館内サインや周辺観光案内の翻訳は、その次の段階で構いません。機械翻訳をベースにネイティブチェックを加えるだけでも、不自然な表記による不信感は防げます。誰がどう更新するかを決めておくと、メニュー改定のたびに翻訳対応が後回しになる事態を避けられます。
キャッシュレス決済・予約システムを導入する
観光庁の調査では、2026年4〜6月期の訪日外国人の1人当たり旅行支出は24.4万円で、前年同期比+3.3%と伸びています。
出典: 観光庁
決済・予約の壁は、この支出機会をそのまま逃す要因になります。まずは主要な決済手段(クレジットカード・QRコード決済など)への対応を優先し、次に多言語対応のオンライン予約を導入する順で整えると無理がありません。予約サイト経由の受付だけでも、電話・日本語フォームのみの状態より離脱を防げます。
地域の魅力を活かした体験・商品を提供する
観光庁によると、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,559億円(速報値)で、前年比+16.4%と過去最高を更新しました。
出典: 観光庁
価格だけで比較されると価格競争に巻き込まれやすくなりますが、その地域でしか味わえない体験や商品を打ち出せれば、単価や口コミの面で差別化ができます。産地食材を使った限定メニューや、地域行事に合わせた企画など、自店の強みを具体的な言葉にすることが起点になります。この「独自性の言語化」は、次章で扱う情報発信先の選定、とくに韓国市場向けの対策とも密接に関わっています。


